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専門コラム 第158話 購買心理は常に提供企業の真逆である。”応援消費” に見えるその理由とは?

MAKUAKE、CAMPFIRE、READY FORなど、投機目的ではなく一般の方が参加しやすい購入型・寄付型のクラウドファンディングが、コロナ禍ということも相まって今大盛況です。

当社にご相談に来られる経営者の方や、クライアント企業の中にもクラウドファンディングを使いたいという経営者はいらっしゃいます。もちろん応援してもらえるような内容であれば当社としても出来る限りのサポートを行うのですが、一方で気乗りしないケースもあります。

どのようなケースか?それは、初期コストの削減および軍資金集めにだけ目が向いてしまっている場合です。

何かを新しく始めるために、商品であれば初期の製造コストが掛かります。熱い想いはあるが、お金が足りない。だからクラウドファンディングを利用してその想いと出来上がってくるであろう商品に期待をしてくれる方々からその初期のコストを購入予約や寄付で賄って、世に出していく・・・。これがクラウドファンディングの基本的な主旨かと思います。

ですが出品者側の軍資金集めの目的が先で、想いは後付けにして、いかに消費者のマインドに訴えるための演出をサイト上でどう表現するかを考える。このような本末転倒としか言いようがないケースが時折あります。

ITが進む今、消費者は様々にネット上で簡単に沢山の情報を見ることができます。よく魚市場や料理人などで、目利きのある職人というような言われ方をしますが、今の消費者の多くは、ITに目利きがある人たちです。飾られた情報なのか、本当に真意を伝えている情報なのかの見分けが出来ます。これを十分に理解していないのは、軍資金集めなどの自社都合でしかクラウドファンディングを捉えられないような提供者です。

クラウドファンディングで沢山の支持を集めている出品者を見ればよく分かります。

新しいアイディアや魅力的な商品・サービスであることはもちろん、なぜこの商品やサービスを世に出したいのか?に対する熱い想いをしっかり伝えているからこそ、応援消費されているのです。

素敵な写真や動画があるから。

消費者に響くキャッチコピーがあるから。

このようなテクニカル的なことが、まず以て重要な要素ではありません。全てはどこの誰にも負けない情熱が起点となり、その熱い想いを上手に画像や動画、キャッチコピーなどをどう表現すれば消費者に伝わるだろうと、考えに考えた末に作られたクリエイティブなのです。

要するに見栄えのクリエイティブありきではなく、出品者の考え、想い、情熱が表されているかどうかです。結果として沢山の支持を得て、沢山の資金が集まるという構図です。

企業への投資とは少し違い、クラウドファンディングでは大半が一般消費者が対象で、基本は商品などリターンへの期待ありきです。そこに誤解を恐れずに言いますと心理的にはこんな素晴らしい出品者を ”応援している気分” も込まれています。

そう、この”応援している気分”こそが、応援消費の背中を押してくれるものなのです。

とはいえ、出品者側が「だったら最近流行のSDG’s的な要素も加えておけばいいだろう。」のような付け焼き刃では無論通用せず、消費者を舐めているのか!?となります。

先にも言った通り今の消費者は、全員がITの目利きですから。

コロナ禍に入り、観光業や飲食業が沈む中、様々な食材が消費されず、納入業者も生産者も困って、そこの応援消費を支援するサイトがSNSも含めてたくさん立ち上がりました。それらのサイトで購入されるのは、定価の50%OFFやはてまた80%OFFなどの圧倒的な処分価格のものや、和牛やうなぎなどの高級食材が大人気です。

要するに、元々の商材に魅力が無かったり、割引率が低かったりすると応援とは言いつつもさほど消費されないのが現実です。消費者側のメリットが最優先されている顕著な例です。

高級和牛肉を50%OFFで購入した消費者のコメントは、例えばですがこんな感じです。

「コロナで大変な状況だと思いますが、少しでも貢献できればと思い、1kg買わせていただきました。頑張ってください!」

少しでも貢献できれば・・・というのが普段は50%OFFでも買わないようなお肉の購買の決め手にもなっているのです。”応援している気分”です。ですがそれこそ本気で応援するのなら「50%OFFですが、定価で買います!」とか「1.5倍に色つけて買わせていただきますね!」となるのではないでしょうか。

私自身も購入型のクラウドファンディングを個人的に利用したことがありますが、多くの場合、新しいチャレンジ(商品・サービス)の魅力と、想いに共感していただく方に、購買や寄付、いわゆる”お金”で応援していただくことです。

ですので、消費者からすると一番は何と言っても商品やサービスの魅力。二番が出品者の想いでしょう。

ですが実は、出品者側はこの真逆でなくてはなりません。魅力だけでもダメ。想いだけでもダメ。何よりも最初にまず想いがあって、その想いが魅力ある商品やサービスに、淀みなく変換されていることが最も重要なのです。

次にサイトでのページデザインや写真、動画、キャッチコピーなどのクリエイティブの力によって、魅力を最大限伝えることで魅力ある商品およびサービスに対して、利用する=対価を支払うことで応援しよう!= “応援している気分” を以て成立します。

応援消費の場合、このように社会貢献や他者への貢献といういい気分が、対価を支払う決定的なことになりますが、一般消費でも同じようなことで、例えば主婦の方が、家族の日常生活用では買わないような自分のためのちょっとしたいいものを買おうかなと思った時、多くの人は価値や価格の検討だけでなく、真っ先に”買ってもいい理由”を見つけに行きます。

一種の罪悪感を消したいことから、買う自分に対する言い訳を探すのです。決して口には出しませんが、買うための理由を欲しがるのが多くの消費者心理です。

資本リソースが乏しい中小零細や個人にはクラウドファンディングのサービスを大いに利用して欲しいと思います。しかし腹の中では軍資金集めの目的が先になっていて、想いや情熱は後付けみたいな考えでは、もし一瞬うまくいったとしても長続きしないことは明白です。

大企業のように多額のギャラで有名人を起用してのキャラクターイメージ広告を出して力技でねじ伏せることも出来ない。

そんな資本力の限られた中小零細であればあるほど、応援消費しかり、一般消費しかり、当社の専門とする大切な人へ贈るギフトであればなおさら、本気の想い、情熱こそが応援消費や消費行動を起こさせるために大事な、”買う理由” “応援する消費” に化けてくれるのです。

目先の売上・利益・コストに追われ、世の中や社会のために!と、いいことを言っているようでも、自分では気づかないうちに利己主義に陥っていませんか?

ネット社会の今では大手企業だけなく、数多くの中小零細でさえも目に見える商品やサービスだけでなく、背景にある企業のヴィジョンや姿勢も同時に問われています。