専門コラム 第138話 商売・ビジネスで、安易に活用してはならない”諸刃の剣”。
「園先生、今、行政が支援している送料無料等の通販サイトが大人気のようですが、行政の支援(送料無料など)がなくなった時に、どれくらいのお客様がそのサイトに残ってくださるのでしょうか・・。」
懇意にしていただいている、ある地方創生コンサルタントの先生からこのようなメールを先日いただきました。
私の専門とするギフトの通販を含むEC・通販業態は今、ご存知の通り、巣ごもり需要から大きく売上総額を伸ばしています。
コロナが収束し、人々が活発に活動し始めると、実店舗の小売業・飲食業・観光業など、もろにコロナの影響を受けた業種での売上はコロナ前100%までに至るかどうかは別にして、大きな回復を遂げることでしょう。
その分、EC・通販は間違いなくその反動を受けて、巣ごもり需要期よりは当然落ち込む時期も必ずやって来ます。
その地方創生コンサルタントの先生は続けてこのようにも述べられました。
「安売りや送料無料など、最終的に事業者の負担になるようなサービスは、長続きしないので、本物のお客様を獲得するような商品力や価値の付け方、販売方法が重要ではないかと考えています。」
まったく私も同感でした。
商売・ビジネスをしていますと分かってはいても、特にビジネス規模が小さければ小さいほど、目先の売上・利益に目が行きがちですよね。
今月の目標は達成できたか?
今週はどうだった?・・・など。
四半期・半期・1年どころか、小売業・飲食業の特に現場では、今日1日の売上予算には達したか?と、日々追いかけられていることも多々あるでしょう。
この時の売上に執着することは大きな予算必達のためにも日々の数字を意識することはいいことです。
大事なのは、単に短期の結果だけで一喜一憂するだけでなく、長期の予算や目標に対して今日1日がどうであったか?
この日を迎えるまでに、その長期予算や目標達成のために、どのような戦略・施策を準備し、実行できたか?の方が、得られた結果より重要であったりします。
そんな取り組み、努力をしてきたか・・・です。
どのようなビジネスでも同じと考えますが、ここでは私の専門である通販ビジネスの視点から書きます。
通販の売上を上げるために最も有効で効果が高く即効性のあるものは、送料無料サービスと値下げです。
一方で、これらは”諸刃の剣”でもあります。
福岡に200社ほどあると言われている明太子業界が、需要拡大・売上拡大を狙って自家需要向けに「お徳用切れ子」タイプを競い合うように一生懸命売った結果、どうなったか?
それまで旅行の手土産や、贈答品として業界としても価格を守り、消費者にもその価格で利用されてきたものが、正規の値段のモノが売れにくくなり、後になって業界全体で自らの首を絞める結果を招いたのです。
通販ではギフトもそうですが、消費者が購買意思決定の際、価格面で最も気にする第1位はどのような調査結果でも送料がどれだけ掛かるか?です。
その判断基準は300円以下か以上かとも言われています。
宅配便を使って全国各地にたった300円で送れるはずもないのですが、これも過当な送料サービス競争を繰り返して来た、通販業界全体が招いた結果とも言えます。
それに値下げです。
タイムサービス的な一時であればいざしらず、常に値下げから売上確保しているとどうなるでしょうか?
値下げした価格でしか売れなくなり、当然利益を圧迫します。
値下げが一様に悪いとは言いません。
今この時は値下げをする。または送料無料サービスを実施する。ということが、長期戦略に基づいた中でなされているのかどうかが重要で、ちょっと今月売上が足りないから・・・という短絡的な理由だけで実施してはならないということです。
当社では、ギフトの販売や商品開発を提唱しています。
常々申し上げていることですが、大切な人に贈るギフト商品では特に、安易な値下げや送料無料を行うべきではありません。
そういった商品に群がるお客様は、価値判断でなく価格判断でしかモノを買わない、安いものがあればすぐに浮気される、決して顧客になり得ないお客様を掴むことになります。
結果、どうなるか?
いつも粗利を削り、CPO(コスト・パー・オーダー)の高い新規客を常に掴まねばいかねばならない、非効率な事業へと陥ります。
値下げや送料無料は、短期的には効果を発揮することは間違いないです。
一方で長期的には、マイナスになる可能性が非常に高い「諸刃の剣」であることをどこまで理解し、重要視しておくかが、特に経営者には問われます。
あなたの会社の商品は値下げをしないと売れないものなのでしょうか?
適正な利益を得られる、価値評価で買われるモノに変貌させませんか?