専門コラム 第195話 世の中に無いものには売上計画は立てられないし、中小企業にはその必要なし!
「園先生、本当にお久しぶりです。現在様々な逆境がありますが、おかげさまでECの販売が絶好調です!」
コロナ禍があってなかなかお会いできなかった刃物製造業を営むW社長に、その後の状況など伺うために会社のある岐阜まで行き、ホテルのレストランでホテルのレストランで会食をしていました。
W社長は続けて「先日、社員からこんなことを言われました。彼は東京まで行って管理会計を学び、私にこう言うのです。」
「『社長、商品開発費をあまりにも使いすぎです。これでは儲かりません。しっかり稼ぐために私に新しいブランドを立ち上げさせてくれませんか?』と。」
社長に対しても、しっかり自分の意見を述べることができて、しかも自らが積極的にチャレンジさせてほしいという熱い社員がいるというのは本当にいい会社です。
「でもね、その時は正直腹も立ちましたよ(笑)。ですが、新ブランドの立ち上げをやらせてみることにしました。そこでどれだけ商品開発がどれだけ大変なものか、彼も勉強することになるでしょう。」
管理会計を学ぶ社員から見れば、W社長が試作品を何度も製造するのに、きっと目に余るほどの沢山のコストや時間が掛かっているのでしょう。
確かにこのW社長、一つの新商品を世に出すまでに2年〜5年も掛けられています。ですが、決して無駄に時間を費やしているのではありません。試行錯誤を繰り返されている理由には、
利用されるお客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら、より高い理想を追い求め、これまで世の中になかったものを生み出されようとしているから・・・なのです。
もちろん経営ですので、いくらいいものを作り出せても利益を生み出すことが出来なければ失敗ですが、そこには刃物製造で栄えた地のプライド、先祖代々営んできた伝統もあり、社長自身が自信を持てない限り、不確かな状態では決して出されません。
ですが、いつの世もイノベーションを起こすのはまだ世の中にないものです。
apple社がまさにそうですよね。iMac、iPod、iPhone、apple watch・・・。パソコン、音楽や映像のダウンロード視聴、携帯電話、携帯のカメラ機能で、とてつもなく大きなイノベーションを世界にもたらせました。
会社や事業がある程度成熟してきた中で新たなチャレンジをするとなった場合、
「その新ブランドや新商品がどれだけ売れるのか?」
「利益構造はどうなっているのか?」
「いつ黒字化するのか?」など、
まだ見えないものを見ようする心理が多くの人に働きます。それを会議用の資料としてもし出したとしても、絵に書いた餅にすぎません。
同業他社と似たような新商品開発であるならば、イノベーションは決して起こせず、せいぜい先行企業とのスペック面や価格面でも差別化を行うしかありません。「類似商品が他社ではこれくらい売れているので、うちもこの程度はいくと思います。」程度のことは言えるかもしれませんが。
しかし、まだ世の中にない、真の新商品の場合は比較する対象がないため、周りが安心できるような根拠や材料は本来どこにもなく、そこにあるのは ”チャレンジ精神” のみです。
そんな中でもマーケティング方法や計画を考えたり実行することはもちろん必要ですが、そこで目指したい数字は出せても、叩き出すであろう数字は決して出せないのです。
先のW社長の決して妥協しないものづくりへの情熱と取り組まれれる姿勢が、今のEC事業の成長、ギフト化での成功に大きく繋がっています。大手企業では通用しないようなことなのかもしれませんが、中小企業だからこそチャレンジできることがあるはずです。
新たなチャレンジを拒むのは、失敗を恐れる心です。
周囲からの反対で諦めるのは、そこまでの情熱がないからです。
何もチャレンジしなければ現状維持は出来ても、発展や成長は決して訪れませんし、その現状維持もいつまでも続かず、緩やかにいや急激に落ちることだってあります。
W社長の会社のように、新たなチャレンジでの成功を得たいという会社のために、当社ではギフトECの手法を主題にしたセミナー等で門戸を開き、サポートさせていただいています。
熱い志を持つ経営者の方との出会いを、いつも心より楽しみに待っています。