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専門コラム 第13話 「自社通販で売るか、他社にも売っていただくか」

全国的な寒波襲来で首都圏でも4年ぶりに雪が積もるなど大混乱もあった先週のある日、旧知の食品メーカーの社長から、こんなご相談を受けました。「園さん、ギフト商品の新開発が出来まして、 それを軸に大きく売上を作りたいのですが、販売価格に悩んでいます。自社通販サイトでも売りますが、卸も広げたいです。うちのこの商品が売れそうな価格帯っていくらくらいでしょうか?」

私は、質問に対して質問で返すのは失礼なので一旦答えをお返しました。「御社のこの商品なら5,000〜10,000円くらいならギフトで成立しそうな価格帯ですね。よければ簡単にで結構ですので 全体的な販売計画を聞かせていただけますか?」「自社のネット通販とDM通販、それと卸販売ですが半々くらいで2、3年後には年3億円くらい売りたいです。」

私の前職時代、このメーカーさんの商品採用は少なかったのですが、主力商品や会社のことは知っていました。作られている製品は素晴らしく、中身の味も本当によく、パッケージデザインも 洒落ていて高級感もあり、ギフトとして十分な出来栄えです。

ではなぜ当時、採用出来なかったのか。答えは明確、卸価格が高かったからでした。もちろん品揃えの一環、粗利ミックスの考え方で採用することも出来たのですが、そういった採用枠はごく限られた、食品ギフトであればゴディバのような誰もが知る有名ブランド商品だけでした。

また、この会社は自社でネット通販やDM通販で直販もされています。しかし、卸しと同じ商品が掲載されているのに自社通販では2割ほど安く売られていました。この会社に限らず、今はネットで簡単に調べられるのに、まだまだこういった状況をよく目にします。自社だけで売る分には、いくらの価格にしようがもちろん自由です。一方、売上拡大のために卸販売を仕掛けるのであれば、最低限、設定上代は合わせるべきなのです。新商品を開発して、卸まで仕掛けるのであれば、売れる価格帯がどうのと言う以前に、以下のことを整理しておく必要がありますので、要点を書いておきます。

①卸はほどほど(もしくは無し)ほぼ自社だけで販売するのか
②自社はほどほど(もしくは無し)ほぼ卸だけで販売するのか
③自社・卸の両方で販売するのか

①は先述の通り、いくらの価格設定でも自由です。②はどこで販売してもらうのか、業界常識だとどの程度の上代・卸価格が適正かを見極めなければなりません。この業界常識を知らないままに価格設定をしてしまうと、どんなに優れた商品や企画書があって、スーパー営業マンがいたとしてもほとんど採用は難しいでしょう。時間・労力・営業経費がムダになります。運良く、または政治的に何とか採用されても長続きすることはないとも断言できます。

そしてさらに難しいのは③の自社・卸の両方での販売です。しかし、大きく売上を伸ばせる可能性が高いのも③です。 では、どう考えればいいか。大きな売上を作りたいのであれば自社だけでなく他社にも卸すのが早いのは間違いありません。ですので、ご相談の社長には、自社・卸の両方で販売されるのはいいですねとお伝えはしました。が、その前にしっかり整理しておきたいのが取り組みへの考え方です。

単純に2通りありますがまず1つ目、卸販売をも想定しながらもまずは自社販売で実績や経験を積み、様々ブラッシュアップされた段階で卸販売の仕掛け、例えば展示会への出展や営業強化を行う。商品が開発出来たから、価格を決めて自社販売も卸販売もやるぞ!と意気込むことは悪くはないのですが、卸販売を先にするか後にするかを考えると同時に、卸販売を想定するかしないかも決めておかなければならない大事なことです。

例を挙げますと、多いのはまず自社販売することからスタートされる企業です。有名なところだと今は飲料大手アサヒグループに入った料亭「なだ万」があります。実名を出して申し訳ないのですが、15年前ほどはギフト商品の取扱いをさせてもらえませんかとお願いをしても門前払いでした。しかし自社だけでは限界を感じられたのでしょう。7-8年前くらいからは積極的に卸販売にも力を入れ、ギフト商品卸では大きく売上を伸ばされました。他にもなだ万の名前が入るコンビニで売られているお茶が出来たり、ブランド力を大いに活かせれています。

もう一つ実名を挙げますと、モチクリームという有名スイーツの会社があります。一時はデパ地下で大行列ができるほどの大人気で、 関西を中心に東京にも出店攻勢をされました。洋クリームを中に入れた大福餅を世に広めた会社で、今では特に和菓子メーカーがこぞって模倣し、当たり前の商品になったほどですが、出店攻勢をかけていた当時は大福をジュエリー陳列のような高級感があふれるガラスケースに入れていたのが斬新でした。(高級チョコレートの店舗みたいな感じ)しかし数年が経ち、飽きられたり模倣されたりで売り上げが低迷した時に、ギフト商品の卸販売を始められ、営業努力も大きくあったと思いますが、それまでに広めたブランド力が功を奏し、業績がV時回復したそうです。有名コンビニのスイーツも手掛けられて成功されました。

この2社の共通点は、まず自社販売や自社店舗展開から強力なブランド力を築いたこと。卸販売を想定していなかったにも関わらず、強力なブランド力の構築があって、卸販売へもスムーズに入られています。当然ながらブランドの浸透には時間もお金も大きく掛かります。そこまで事業が耐えられるのあれば、これらの形は理想的とも言えるかもしれません。

2つ目はこの逆です。ブランド力がさほどない中小企業で、少なくとも数億円レベルで売上構築していくのであれば、 商品開発や販売価格設定などの手前に自社×卸を最初から想定した戦略設計をしておくことは早期目標達成への近道になります。卸販売からスタートし実績を積み、露出を高めて自社販売と連動していく。この戦略からギフト通販を積極的に進められ、両方のチャネルで相乗効果を生み出し、大きく売上を伸ばされている当社のクライアントがいらっしゃいます。資本やリソースがどうしても限られる中小企業には、最適かつ近道な売上の伸ばし方です。

あなたの会社の商品はどのチャネルで販売を伸ばしたいですか?

卸販売と自社販売の関係や違いを整理できていますか?