専門コラム 第10話 「ペルソナ設定、ターゲティングに囚われる落とし穴」
今は当社のクライアントとなられた、ギフトも扱われている老舗企業の役員の方からこんなご相談を受けました。
「園さん、これから先の時代を見据え、今まで取り込めていない若い人にも利用してもらいたいのですがどうリーチすればいいでしょうか?」
単に若い客・・・というだけでは、手の打ちようがありません。イメージとしては独身の女性のようでしたが、取り扱っている商品やこれまでの企業イメージからすると、全てをひっくり返すくらいでないと達成出来ないくらい、あまりにも無謀なことに思えたので「若いお客・・・ではなく今まで捉えらきれていなかった新しい顧客ゾーンや、既存顧客への新たなアプローチはどうですか」とお話をしてコンサルティングをスタート、現在はそこに向かって真摯に取り組まれ、成果を出し、着々と目的・目標に向かって歩みを進めておられます。
昨日の成人の日、あいにくの雨模様のところも多いようでしたが総務省統計によると全国で126万人が新成人になりました。新成人の人数のピークは1970年の246万人だったので、この半世紀でおおよそ半分に減少しています。
少子高齢化とどう向き合うか。政府主導の人生100年時代構想がありますが、若者を増やすことは今後も期待薄で、年配者にできるだけ健康長寿を全うしてもらい、長く日本経済を支えてもらうということもあるでしょう。
一方で世界の先進国に比べ、日本のGDPは世界3位でも一人当たりの生産性は22位とかなりの低さを指摘されている中、AIの活用や機械化から多くの人材を必要としなくなってくる時代になるのも明白なので、国力として人口はもちろん大事ですが働き方改革も含めて、単に人が多ければ多いほどいいというわけでもないでしょう。
ギフトの通販ビジネスで捉えれば、生活環境が変わりやすい20代を無理に取り込むよりも、生活が安定してきてギフト利用も多くなってくる、30歳以降からのミドル層〜シニア層をどう取り込むかが重要なキーになります。
そのことを現在のネット、EC環境から見てみましょう。まず先週の日経に掲載されたインターネット利用人口の図を引用します。
20年前の1997年(平成9年)、楽天が設立された年には10人に1人の割合でしかなかったインターネット利用人口が、2017年 (平成29年)には1億84万人です。日本の総人口が1億2670万人ですから、乱暴に言いますと乳幼児以外、ほとんどの日本人が利用していることになっています。
さらに総務省の統計を見ますと、もっと興味深いのがインターネットの利用目的です。
10〜19歳の未成年は大半学生であること、また独身者の多い20代、社会から身を引く人の多い60代以降で多少の違いが出る部分もありますが、30〜50代では世代に関係なく、グラフの曲線を見てわかるように利用目的での差はほとんど大きく変わらないことが分かります。先にも触れましたがここからも読み取れるように、社会人になり、家庭を持ち・・・という風になってきますと、可処分所得の差やライフスタイルは多様化しても、ベースの生活環境は似ているということです。
特にギフトにおいては、社会人になることや、家庭を持つということが大きなシーン発生を生み出します。
どんなお客様にアプローチするか。プロファイリングやペルソナの設定などマーケティングではとても重要なことです。しかし場合によっては、それが全てではないこともあります。
小さく見すぎるとまさに「木を見て森を見ず」になってしまい、かえって目指す方向性を見誤るリスクを高めてしまいます。
まず世の中の大きな流れを押さえ、自分自身や周りの生活にも留意し、地域特性が必要なのか、全国的にはどうなのか、都市部ではどうなのか。そういったところから最終的にペルソナまで落とし込んで、自社の商品やサービスからアプローチしていくことがリスクヘッジにもなり、より効率的に捉えたい顧客へのアプローチに近づいていきます。また、無理にペルソナにまで落とし込む必要はないかもしれません。
あなたの会社では、大きな流れから捉えようとしていますか?
細かなターゲティングから入り過ぎていませんか?