専門コラム 第119話 「売れない理由」は「売れる理由」に変えられる。
先日、旧知の食品会社の社長から数年ぶりにお電話をいただいた時のことです。
「園さん、ご無沙汰しています。今、通販コンサルをされているとのことで、ぜひ教えていただきたいのですが・・・。」
「巣ごもり需要から通販が相当好調だと聞いています。本当にそうなのでしょうか?ウチの商品も自社でネット通販やっていますが、ネットはコロナ前と同じく全然売れていなくて。結局、まだまだ実店舗や卸販売に力を入れないといけないんでしょうかね?」
どの販売チャネルに力を注ごうが、選択は自由ですが、コロナ以前に商品やサイトそのものがどうなのか?ということで、販売されているサイトを少し拝見しました。
サイトを見ますと、肝心の商品写真はいかにも素人が撮りました的な画像に、商品名、価格、スペックが並んでいるだけで1行のセールスコピーすらなく、製品パッケージの写真すらもない、支払方法は銀行振り込みの前払いのみで、カード決済、代引き、後払いなど他の決済方法もなく・・・。
「ネット通販の担当をされている方はいますか?」と尋ねると、
「製造や営業の担当者も忙しいですし、ネットは元々売れないので事務員に任せています」との回答。
私は、”ネット通販を舐めているのか!”と、心の中で叫びながらも続けてこう伺いました。
「メインの卸売りの業績はどうですか?」と聞くと、
「いやー、コロナ前から厳しいのは厳しかったのですが、コロナ後は引き合いが一気に減ってとても苦戦しています。その分ネット通販の方が売れてくれればいいんですが。」
「ですが、競合他社がどんどん価格を下げてきたのでウチも極力合わせてきましたが、今以上に苦しくなる一方です。」
「営業がもっと頑張ってくれればいいんですが、昔のようにがむしゃらに行く優秀な営業マンもいないですし。」
「昔から売ってきている商品には自信があるのでまたいつか売れてくれると信じていますが。新商品の開発もやっぱり必要とは思いますが、なかなか時間が取れなくて。」
お話しを聞いていますと、次から次へと現状への不満?愚痴?をこぼされました。
そうです、この会社の最大の問題点は、販売チャネルではなく「商品そのもの」であり、その根底にあるのは、世の中の景気や状況任せな「会社方針(経営者方針)」にあります。
いくら品質に自信があるからと言って、今までと同じ商品をこれでもか!と卸販売で売り続け、その自信ある商品は競合他社が増え、まさに価格競争に疲弊している状態です。
時代の変化にも左右されないような、新しい時代を切り開いていくための 「”新商品” をまったく開発していない」ことが最大の課題です。
営業も毎度毎度、同じ商品ではモチベーションも上がらず、取引先にも飽きられます。
ですが、新しい商品ができれば取引先へも案内するチャンスは当然広がりますし、モチベーションも上がるでしょう。
コロナの巣ごもり需要からネット通販が今絶好調であるのは、しっかりコロナ以前からネット通販に真剣に取り組んできた事業者へに対しての”ご褒美の時期”が来ているのだと、私は思っています。
昔からそうですが、全国的な猛暑や極寒でレジャーなどの外出がとても出来ないような時に数字が跳ね上がるのも”通販”です。
この大きなチャンスに対して、通販ビジネスを適当にやってきている事業者までもが儲かるというほど、甘いものでありません。
期せずして訪れた外的要因によるビジネスチャンスというのは、開幕したプロ野球に例えると、難攻不落な絶対的相手エースピッチャーが、一瞬だけ気を抜いてしまい、プロには打ちごろの半速球をど真ん中に投げてしまった状態。
このど真ん中の半速球、絶好球を日頃から鍛錬を重ねている同じプロのバッターなら見逃さず、ヒットにしたり、ホームランにするでしょう。
ですが、大した鍛錬もしていない草野球レベルのバッターが、この球を確実に捉えることができるでしょうか。よくて振り遅れのファウルが関の山でしょう。もし、まぐれでヒット出来たとしても、2打席目、3打席目までは続かないですよね。
通販ビジネスも、ギフトビジネスも、何十年もの間、いや100年以上でしょうか。先人が数々の苦労を重ね、苦難を乗り越え、築き上げてきたビジネスモデルであり、マーケティング手法です。
今の時代、ネットショップは誰でも簡単に費用もさして掛からず開くことは出来ますが、単に通販全体が好調だからといって、適当に商品だけを羅列しているような小さな会社のネットショップは誰からも見向きされません。
売れない理由は、誰でもいくらでも述べられます。
その売れない理由を突き詰め、手を打つことで、売れる理由に変えていけるのです。
コロナから予期せぬ苦しい状況に、いきなり陥ってしまった社長も沢山いらっしゃいます。ですが、いつまでもコロナのせい、世の中の経済状況のせい、社会環境のせいにしていては明日はありません。
積極的に取り組みだす事、一方で守るべきこともしっかり整理して、コロナ続く局面を切り開きましょう!