専門コラム 第120話 「虚構」は儚い夢に終わる。「本質」の追求は長い夢へと続く。
先週のある日、当社クライアント社長との会談で近況などを伺っていた時のことです。
「園さん、この事業が思ったよりも早く黒字化できて今では会社の大きな柱に成長しました。思い切って先行投資した甲斐がありましたよ・・・」
このクライアントは中小商社で、あらゆるジャンルの商品を扱っているのですが、その中で約10年前にスタートされたのが、今ではとても有名になった種子島の安納芋の事業です。日本一甘い芋と言われる、さつま芋の一種ですね。
事業のスタート当時、一般的にまだまだ知られていなかった安納芋に着眼し、単に種子島から買って仕入れるのではなく、ある生産農家グループに5千万円を出資し、不十分であった設備投資を行い、年間の専売買取契約を行い、不安定であった現地の雇用を守り、作業効率向上のための指導も行い、自社独自のネーミングを施し、ブランド化までされました。
結果、今では安納芋を扱う民間企業の中では、日本一の取扱量にまで成長。
ですが黒字化できたのは先行投資から6年目以降のこと。そのクライアント社長はこう続けました。
「スタートより5年はさらに出資を続けました。私は10年で黒字化できればと考えていました。この事業は、品質向上、生産性アップ、安定供給の体制ができて、そこに当社の販売力を絡ませれば、必ずや成功すると信じていましたので。」
「中小企業でも新規事業を成功させたいなら、最低でも1千万円は必要ですよね。」とも。
全く同感です。仕入れもなくていいですよね〜と時には羨まれる?こともある、私がやっている小さなコンサルタント会社でも悠に1千万円以上、投資しているわけですから。
さて、そんな6期目に入った当社では過去5年間、様々なご相談がありました。
ご相談の中には「できればあまり費用を掛けず、インフルエンサーとか使って早く売れるようにしたいのですが・・・」というようなご相談も少なからずあります。
瀕死の状態の企業でしたら、無論コストも掛けず、早く売れて利益が出るに越したことはないでしょう。ですが、そのようなケースではお断りしています。
なぜ断るのか?
私の専門とするギフト、通販、またその中で最も重要と位置づけする”売れるギフト商品開発”は、並大抵のことでは達成できません。簡単に出来るなら誰もが成功するでしょう。
当社のコンサルティングでは、主に以下に重きを置き、これらの専門ノウハウを、真にご理解いただきながら進めていくための時間も掛けながら、しっかりとお伝えしています。著書には書き切れないクライアント状況、目線、目標に合わせながら個別で行う指導です。
・いかに他社が簡単に真似のできない独自の強みを込めたギフト商品にするか?
・長く売れ続けるために利益を出し続けるために、どんな価格設計やゾーンを用いるか?
・愛され続けてもらうためのブランド戦略や、クリエティブをどう作り上げていくか?
・ギフト・通販、それ以外の販売チャネルでも通用させるにはどうするべきか?
様々な観点を俯瞰し、統合した戦略を構築していかなければ、長く続く事業は成し得ないため、だからこそ、あまりに短期的な結果を求められる場合には、お断りをしているのです。
クライアント企業が向こう3年、5年、10年、いや100年先も見据えられるような普遍的なもの、時代に左右されないものの基盤を作っていただくお手伝い、サポートをしているのが当社独自のコンサルティングです。
SNS全盛の今、インスタ映えや、ネット上でバズらせる(炎上商法も含め)、影響力のあるインフルエンサーやユーチューバーの活用など、SNSマーケティングもいいでしょう。短期的な効果は、ある程度得られるはずです。ですが・・・。
それらはあくまでも一過性の「虚構」でしかなく、早く売れるかもしれないが、売れなくなるという収束も、その分速いと言うことです。
昔よく売れていた懐かしの歌手やバンドが ”時代と寝ていた” と表現されることがあります。
その時代の流行りのサウンドにいち早く乗せたことで一時的に爆発的に売れたが、今では”あの人は今?”みたいになっていたりしますよね。
対して、急には売れないが、真摯に質のいい作品作りに向かい続け、時代を見据えながらも根底では自身の個性を生かし、時代の求めに対して必要以上には迎合せず、自分を信じて突き進むことで、絆の強いファンが積み上げられ、息長く活動されている歌手やバンドもいます。
また、傍には第三者目線で見てサポートする、優れたプロデューサーがいたりもします。
企業活動は中小も大手も継続させなければ新しいチャレンジすらできませんので、目の前の派手な事象に惑わされず、後者であるべきで、何事にも常に「本質」を追及すべきなのです。
本質の追求を口で言うのは簡単ですが、真の意味の理解を深める必要もありますし、少し時間は掛かるかもしれませんが、普遍的なもの、時代に左右されないものによって、末長く続く夢のある未来を切り開くのです。
今、あなたの会社では常に本質を追求されていますか?
足元の売上利益だけに目がいっていないですか?