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専門コラム 第145話 新市場を開拓していく”継続と変換の力”とは?【一大ジャンルに成長!高級生食パン事例からの考察】

先日ある当社クライアント企業から、3月決算での嬉しいご報告をいただきました。

「園さん、ネット販売を続けてきて本当に良かったです。今期はギフトも沢山ネットで売れまして、実店舗の売上は減収でしたが、会社全体では増収増益見込みとなりました!」

コンサルタントとして、何より嬉しいご報告でした。

もちろんコロナ禍での巣ごもり需要が寄与したこともありますが、このクライアント企業の直販事業では実店舗での売上構成比率が約7割近くを占めていましたので、コロナによって売上が前年比2割まで落ち込む月もありました。

それまで頑張って続けてきたEC・ネット販売で、もっとできることはないか?と模索し、新たな企画も打ち出したり、これまで以上に積極的なネットへの広告投資を増やして、180%以上増とし、影響の少なかった卸販売と合わせて、増収増益とされました。

EC・ネット販売を着実に続けてきたこらこそ、危機回避が出来たのです。

コロナの影響において、いきなり厳しい経営環境に置かれた会社は沢山あると思います。

一方でこのような状況でも工夫を施し、投資も行い、伸ばされている企業もあります。

さて、話は少し変わりまして、今日の本題へと進めます。

“高級生食パン” を考察する。

誰もがご存知のパン業界の新潮流ですよね。もうすでにブームではなく、1つのジャンルになったといっても過言ではないでしょう。

セブンイレブンの1斤250円の高級食パンが火付け役とも言われているようですが、決定的だったのは大阪の「乃が美」でした。

元来、大阪の食文化はその昔、稼ぎまくる商人の町でもあったことから高級志向でもあり、相反してドケチ志向でもあります。このようなことが”食いだおれ”の語源になったようで、求める食感は柔らかいもの。

お好み焼き・たこ焼き・讃岐うどんの硬さに対して柔らかいうどんなど、粉もん文化が発展していったのも、より柔らかいものを求める文化があったからかもしれません。

そんな大阪の食文化の中から、耳までそのまま食べられる!が謳い文句の高級生食パン「乃が美」が登場しました。

「乃が美」の詳しい誕生秘話などはネットでお調べいただければと思いますので、ここでは現在、高級生食パンがどのように消費者に捉えられ、どんな市場を形成していっているのかについて、ギフトからの視点も踏まえて、考察をします。

まず、食パンは現代人の日常生活の中での朝食としてトースターで焼くだけ、バターを塗るだけの手軽に調理が出来て、時間が掛からずさっと摂れるものとして広く普及しました。

そのため、朝からご飯を炊いて食べる・・・ということが減り、お米の消費量低下にも大きく影響していきました。

忙しい朝の調理時間を圧倒的に短縮でき、また、お米を食べるほど朝は胃が起きていない、バターやジャムなど、様々な味付けで飽きないなど ”簡単便利かつ美味しい” こその大きな普及です。ヒット商品となるなるための大きな要素 ”不の解消” を大きく果たしていたのです。

そんな全国的な普及、成熟しきったと思われていた商品に、新風を巻き起こしたのが“高級生食パン”でした。1斤100円でスーパーやコンビニで買える食パンを、2欣を基本にして8倍の800円という値付けで登場、圧倒的な支持を得たのです。セブンイレブンの250円の高級食パンに比しても3倍強の値段です。

なぜ、日常生活にある商材をこのような高価格で売っても沢山の消費者に支持され、売れるのか?

食パンというありふれた商材で “日常”を”非日常”に大きく変換させた、ということです。

もちろんただそれだけでなく、高級・生という、誰にとっても判りやすく興味をそそる、製品づくりに懸けるコンセプト・目的をシンプルに表すワードを作ったこと。

さらに「乃が美」というショップブラン名は、パンなのにあえてフランスやイギリスではなく、日本の高級料亭のような品のある名前にしたこともヒットした要因でしょう。乃が美の”乃”はすなわち、まさしくの意味があり、”美”はおいしい、感動を意味しているそうです。

日常を非日常に、その非日常をギフト化にということは、私のこれまでのセミナーでも本でも度々申し上げていることではありますが、「乃が美」をはじめ、他の高級生食パンのお店では“ギフト化”も始まっています。

もともと手土産としての需要もあった、高級生食パン。私自身も大阪出張の際、「乃が美」さんに寄って手土産として買ったこともありました。

高級生食パンで「乃が美」を追従し、今や売上・店舗数ではすでに追い抜いたかもしれないすごい勢いで成長を続ける「銀座・に志かわ」があります。

自宅用に買われることは大半ではある食パンですが、乱立状態とも言えるほどの競争が激化する中、ギフト=手土産、いわゆる贈答用としての需要取り込みへの取り組みをされていて、専用手提げ袋、手提げ化粧箱、さらにはオリジナル風呂敷まで用意。しかもすべて有料のサービスです。

これは有料でもそのサービスを使いたいと思っていただけるデザインクオリティが、しっかり施されているからこそできることです。

「自宅用だろうが、ギフト用だろうが、同じ高級食パンを買うわけだから同じでしょ?」というお声がちらほら聞こえてきそうですが、たとえ買われる商品が同じものでも、お客様の心理はまったく違います。

先週メルマガ読者様だけには特別編として、私がどんなセミナーでも必ずお伝えしている、EC・通販参入時の2大ポイントをお送りしましたが、他にも大前提としていることを2つ、今日はこのコラムに書きます。

①日常と非日常、本当の意味合いの違いを知る

②自分用とギフト用では購買心理が180度変わる

このことをしっかり理解し、ギフト転換できれば、他社と簡単に競合することなく自らの値付けができ、価格評価ではなく、価値評価してくれる顧客を増やすことができ、適正な値段で販売ができ、しっかりとした利益確保に繋がります。

また、なによりこの高級生食パンの事業成功の礎となったのは、創業までの経験、創業時からの目的、そこからの商品やブランドコンセプトです。

wikipediaによりますと「乃が美」さんの創業者は飲食店経営の経験があり、老人ホームへの慰問の際、高齢者がパンの耳は硬くて食べにくいと感じていることを知り、食パンの耳を残す入所者が多いことに着目。また、子供卵アレルギーで卵不使用のパサパサのパンを食べていたこともあり、これらの背景から子供から高齢者まで喜んでもらえる耳までやわらかいおいしいパンを作ることをひらめいたそうです。

一方の「銀座・に志かわ」さんは、社長が元々ベーカリー・外食を経営。そこに浄水器の会社と広告会社が共同出資し、”水にこだわる”も大きな独自のコンセプトにして、3社のシナジーで業績を伸ばされているようです。ブランディングは「乃が美」さんに近いものを感じます。

最近では脱サラし、フランチャイズでパン作りを学び、高級生食パン店の経営に乗り出している人も増えてきています。成功されている方々も沢山いらっしゃると思いますが、ここまで増えますと、今後は淘汰されていく店舗もあるでしょう。

最後まで生き残るのは「乃が美」さん、「銀座・に志かわ」さんのようなしっかりした目的・コンセプトからのしっかりした基盤があるところだと、私はそう見ています。

「継続は力なり」と言いますが、双方の共通点はともに飲食での経験、しかも経営の経験からの継続していたことを変換し、高級生食パンの事業へと舵を切られ、大成功されました。

ある程度成熟してきた今、自宅用の日常→非日常のマーケットも引き続き維持しながら、先にもお伝えしたように、非日常→贈答用(ギフト化)への転換もされ出しています。

ここでのギフト化は、ギフト市場という、さらなる”新市場”の開拓です。

ギフト市場に打って出る時、商品開発、マーケティングを行うにせよ、最も捉えておかないといけない重要なことが先に述べた2つ、異なる消費者心理の把握です。

今継続されていること、自社または経営者が持つ様々なコンテンツをまとめ、最大化する。

その力を、時代や社会を見据えながら、事業目的を商品に込め、変換していく。

コロナも近いうち、いつかは収束するでしょう。

あなたの会社も新市場=ギフト市場、EC・通販市場に打って出る準備をしませんか?