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専門コラム 第39話 「中小企業こそ画像も品揃えもシンプル・イズ・ベストに」

 通販・ギフトの通販の世界に、何十年も携わってきた私も大いに賛同ができる、大手ショッピングモールのガイドラインが発表されています。

「楽天市場」のガイドラインの一部ですが、商品画像について、文字入れ過ぎの画像は違反と断言。「テキスト要素20%以内」「枠線なし」「幾何学模様の背景なし」とするガイドラインを201810月より、出店者全員に完全対応を求める、これまでの推奨レベルから必須化へ制度を変更するそうです。ユーザー調査で文字量20%以内というのが、とても評価が高かったことから推奨しているようです。

楽天はご存知の通り、年々成長はしているものの、ごちゃごちゃしていて見づらい、ランディングページが長すぎる、ページ構成が古いなどの批判的な意見があったのも事実です。ネット通販の黎明期からトッププレイヤーとしてECを牽引している楽天ですが、Webページ制作についてはこれまで出店者任せ、また一部の成功店舗を他の出店者が模倣する(楽天の専門コンサルでもその指導をする)ことで、どの店舗も似たようなごちゃごちゃしている印象になっていました。

EC・ネット通販の利用デバイスが、若い世代を中心にパソコンからスマホに移ってきており、全世代平均でもスマホでのEC利用率が逆転しました。スマホではパソコンのように長いランディングページだとそれこそ見づらく、たった一つの商品写真が購入促進において、最も重視されています。

楽天のガイドラインを例に取り上げますと、何が良くて何が悪いのかですが、これまで楽天の商品画像で多かったのは、商品の各特徴・割引率・ポイント10倍などの付与・送料無料などの要素を全て商品写真に被せて掲載するような形でした。今後については、商品の最大特徴のみなど一言だけになります。この一言を入れるにしても、背景がごちゃごちゃしていては分かりづいので、白を基本にしてもらうそうです。

こう聞きますと一見、どの出店者も同じように見えるのではという意見も聞かれそうですが、商品にも色はあり、白い色や白に近い商品でない限り背景が白というのは、最も商品そのものをフラットで見ることができ、かえって商品を強調させることになります。これは、基本静止画であるネット通販は、昔からある紙媒体(チラシ・カタログ)が、ネットに移行したものですが、チラシやカタログでも同じことが言えます。

商品をより多く販売したいがために、様々な要素を商品写真の中に入れ込んでいく・・・というのはネットだけでなく、紙媒体でも陥りやすい現象です。

アートの世界やデザインの世界、料理の世界でもいかに素材の良さを引き出すかとも言われますが、要するにいかに引き算ができるかが極めていくための最大要素。しかし、隙間を埋めたくなる衝動、不安からどうしても足し算になってしまって、様々な要素を入れ込んでいってしまい、結果として何が言いたいのかが分かりづらくなってしまいます。

「商品写真のところだけ見れば、全てが分かるので閲覧時間も短縮できていいんじゃないか」と言われる方もおられるでしょう。しかし、提供者側が最も際立たせて伝えたいのは、商品そのものの良さであるはずです。

50%OFFや送料無料、ポイント10倍などのオファーは際立たせたくなるのも気持ちはよく分かります。しかし、最終購買意思決定において、お客様はお得になるメリットというのは、極端に大きな文字や色使いでなくても、必ず見つけてくれます。

価格表記でもお得感を出すために赤文字にされることも多いと思いますが、赤文字にしたから安いと感じるわけではありません。たとえ黒文字でも本当にお得ならば、お客様には必ず分かっていただけるのです。

通販も含めマーケティングの世界では「千三つ(せんみつ)」という言葉があります。顧客でなければ、1,000人に3人しか反応しないという、様々な過去からの経験則に基づくものですが、ド派手に商品写真を演出しても本当に欲しい人しか反応しないと考えれば、一番届けたい商品そのものをより見やすくする方が得策です。

本当に欲しい人、興味ある人というのは、どんな細かな表現、表記も見逃しません。たとえお客様が年配者で、細かい字などが見えづらい人でも老眼鏡や虫眼鏡を掛けてでも見ようとするのです。買わない人、興味がない人ほど、一瞬でさっと通り過ぎて行くので、そんな人を一生懸命追っかけても「しつこい!」と言われるだけで企業評価やお店評価にも悪影響してしまうでしょう。

画像だけではありません。品揃えについても少し違いますが、「シンプルにすることへの不安」を埋めるという点では同じことが言えます。

大手流通のネット通販サイトで見かけるのは、資本力・調達力に任せて10万点以上の品揃えなど、やたら多数の品揃えを誇らしげにしていることがあります。

結果として、一つ一つの商品に対する愛情のようなものは全く汲み取ることができず、有名な大手企業だからこそ可能である「なんでもありますよ」という戦略になりがちです。

枯れ木も山の賑わいではないですが、それはそれで全体としての売り上げは大きくはなるので、仕組みが確立していれば一つの方法ではありますが、中小企業のECにとっては少々品揃えを増やしたところで、大手とまともに戦えるはずもありません。

核となる商品やその周りの品揃え商品、その画像も含めて磨き上げて、大手では成し得ない表現を探求していく必要があります。

画像も品揃えもシンプルにしても、主力商品さえしっかりしていれば、売上の低下を招くどころか、かえって分かりやすくなり、売上増にも利益増にも寄与することの方が、実は非常に多いのです。むやみに広告表現を多くしたり、脈絡のない品揃えを増やして、いったい何屋さんなのか分からなくなっていたり、何を言いたいのかが分からなくなることになる方がマイナスです。

「シンプルにすることへの不安」を除くために、画像も品揃えをシンプルにするテストを一定期間でもいいので、ぜひ実施してみてください。

もしダメなら、元に戻せばいいのですから。