専門コラム 第56話 「利益を得るため、やってはいけないことを知る謙虚さと賢さ」
「園社長、近々、物販のネット通販に乗り出して行きたいのですが、私自身も、うちの社員も、全く商品の知識すらないのです。もちろん運用もやったことがなく分かりません。こんなのでネット通販に乗り出しても大丈夫なんでしょうか?」
先週のある日、出張先でご相談に来られたIT開発系の社長からでした。知人の紹介で初めてお会いしたのですが、とてもスマートな考え方をされる方で、聞くとネット通販と同じく厳しい IT業界で、15年以上も長く成功させてきた優秀な社長でした。
私は「全く問題ありませんよ。商品や運用の知識は学びながら後からいくらでもついてきますから。それより本気で取り組まれたいなら、新規の事業が面白いと感じることのできる、熱いハートを持った社員を他の業務との掛け持ちでなく、専任にしてあげてください。あと、それにもまして大事なのは・・・」
「社長ご自身がまず本気でやっていこうとなることです。通販の世界は、簡単に言ってしまえば、商品を作り、販売を行い、それによって集客をし、集客したお客様にその後、いかに沢山買っていただけるかというビジネスです。ですので、集客している時点で、利益が出ることはまずなく、何度かのリピート購入をしてもらって、初めて損益が見えてきます。」
「その時点までグッと堪えられる経営者が少ないのが現実です。3ヶ月経っても利益どころか売上も上がらない!担当者を呼びつけて、いつになったら利益が出るんだ!もうやめてしまえっ!・・・。私は以前より、通販事業に参入してくるこういった経営者の方を、たくさん目にしてきました。簡単に通販を始められる時代にはなりましたが、事業ですから投資案件であることには変わりありませんし、片手間で出来るほど甘い世界ではありません。」
「ですが、プラスの損益が見えて計算が成り立てば、乱暴な言い方ですが、あとは掛け算の世界になっていきます。これが通販ビジネスの最大の魅力と言っていいです。」
社長は「私も以前、通販ビジネスはそういうものだと聞いたことがあります!」
さらに続けて、私はこうもお伝えしました。
「弊社は、売れるギフト通販研究所を運営をしていますが、この”売れる”という言葉に対して保証しているものではありません。そんな法則が本当にあればいいのですが・・・。売れるためにどうするかを常に考え、実行することこそが最も重要なので、強く”売れる”という言葉を用いています。」
その社長は「おっしゃられる通りですね。絶対こうすれば売れるということはないですものね。ですので当社とご契約していただいた暁には、いいことよりも、こういうことをやってはダメだということを、強く指導してほしいんです。」
どんな経営や事業においても絶対成功の法則やノウハウ、マニュアルというものは世の中に存在しません。失敗を恐れて何もしないのは経営者としてどうかと思いますが、ムダな失敗を少なくすることは、大きなリスクを抱えづらい、特に小資本の中小企業経営においては大事な側面でもあります。だからコンサルティングというのも存在するわけですが。
「私はダメなことを教えてほしい・・・」この一言に深く感銘を受け、この社長の謙虚さと賢さが、ここに見えました。
私にご相談された社長ではありましたが、私自身も大事なことに気づかされる初対面でした。当社のコンサルティングでも売るため、儲けるために必要な内容もありますが、その裏返しは、やってはいけないこととも言えます。そういった方向からもコンサルティング指導をブラッシュアップしなければ・・・とも思った次第です。すぐに取り掛かります!
あなたの会社でも儲けることとともに、やってはいけないことも洗い出してみませんか?
見事にシェイプアップされた、強固な筋肉質のビジネスに育っていく気がします。