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専門コラム 第187話 多大な顧客損失に繋がるネット通販最大の落とし穴。それは最後の ”詰め” 。

「園さん、お久しぶりです!今はギフトのコンサルをされているんですね。ぜひウチの新商品も見ていただき、ご意見いただけませんか?」

つい先週の話です。冷凍ケーキの製造販売をされている旧知のI社長から、すごく久しぶりにお電話をいただきました。

「I社長の会社は最近どうですか?」と伺うと「まずまず好調です。今はフルーツがこれでもか!と乗っているケーキが店頭で売れていまして。今日そのシリーズの新商品をご自宅に送りますのでギフトの通販でも売れるか、ぜひプロのご意見を伺いたく。」

商品だけを見てアドバイス・・・というのは日頃行っていないのですが、前職の時に大変お世話になっていた社長なので「分かりました。では楽しみにお待ちします。」とお答えし、翌日すぐそのケーキがクール冷凍便で届きました。

さて、どんなケーキが入っているか。

妻とともにワクワクしながらクール便で段ボール箱を開け、その中にあったケーキの箱から現物を取り出すと、I社長が言われていた通り、これでもかっ!と、たくさんのフルーツが美しく盛られていました。「これは確かに贈る方も驚かせられるし、いただいた方にも喜ばれそうだし、ギフトでも売れそうだな〜。」と、まずは思いました。

しかし!です。

箱の中のどこを探しても、どう解凍すればいいのか?が書いているリーフレットのようなものがありません。そこでケーキの箱の裏を見ると、品質表示ラベルが貼られており、その一番下に「冷蔵庫で3時間ゆっくり解凍して召し上がりください。」と小さく書かれていました。

2日後に解凍して食べた後、I社長に感想のお電話を入れ、こうお伝えしました。

「とても綺麗で見た目のインパクトも大で、味もとても美味しかったです!ですが、このままではギフトの通販としては不十分です。解凍方法が表示ラベルにしか書かれていませんでした。しかも箱の裏側で、見つけるのも一苦労しましたよ。」

「ラベルに書いているだけでは、ダメでしょうか?」

「通販ではギフトも含めて対面販売でない分、相当の配慮が必要です。ケーキそのものは宅配便でも崩れることなく綺麗に届きましたし、ケーキ自体の見た目も味もバッチリです。これなら5,000円以上の値をつけても大丈夫でしょう。」

「ですが、冷凍でしかもそれなりの値段のする食品をネットなどの通販で購入検討する時、最も消費者が最も懸念するのは、美味しくいただくための解凍方法です。」

私は続けて「贈られた側は全く予期せぬものを贈られるケースが多く、もしラベルの裏側の記載を見つけられず、いやラベルが箱の裏側に貼られていることにも気づかずだったり、字が小さすぎて読みづらかったりすると、お客さんの勝手な解釈で解凍され、美味しい状態でいただけず、台無しになってしまいます。」

「このようなことになれば、喜んでもらいたいと思って贈ったお客様も受け取ったお客様も悲ませますし、I社長の会社や商品への信頼も失いかねない・・・というところにまで繋がってしまいます。」

I社長は「確かにそうですね。アドバイスありがとうございます!さっそくリーフレットを作って、ギフトでもお取り寄せでも喜んでもらえるよう改善します!」

チャレンジ精神が旺盛なI社長なので、ここから真剣に取り組まれることでしょう。

ここまで読んで、ネット通販での販売経験が豊富な方は「リーフレットを入れておくことぐらいの配慮は当たり前だろ。」と思われた方も当然いらっしゃると思います。

ですが、ただ単に入れているだけ・・・という、非常にもったいないケースも多いです。

先の話のように、冷凍のお取り寄せ食品であれば、解凍方法、保存方法、美味しいアレンジレシピなどを記載したり(QRコードでネットに誘導もあり)はもちろん最低限ですが、広告宣伝媒体としても重要な役割を担ってくれます。

ギフト利用だと商品価格の掲載はできませんが、ネット検索すれば贈られてきた商品がいくらの値段かはすぐに調べられる時代。自社の運営するECサイトへ誘導してもいいですし、贈られた人がその商品をとても気に入って「今度は自分もこの商品をギフトに使おう!」と、数珠繋ぎ的に利用してくれたりにも繋がります。

この好循環を生むためには、お届けする時の梱包、商品の箱、リーフレットなど全てにおいて、商品が届いた人への十分な「配慮」が必要で、さらに梱包資材も、化粧箱などの商品を入れる箱も、リーフレットの記載内容も、うまく使えば先にも申し上げた通り、広告宣伝=営業マンの役割も果たしてくれて、それらのクオリティが高ければ高いほど、自社の価値、商品の価値が上がる。

つまり、ブランド価値の向上にも大いに役立つのです。

「そこまでやらなければならないギフトの通販は面倒だなあ。」と思われるかもしれませんが、ギフトや通販のことだけのことではありません。

小売商品だろうが工業製品だろうが全ての世の中の商品・サービス、いやビジネス全体に言えることなのです。それだけ配慮された商品やサービスの設計がされていれば、少々高価格の設定をしても、世の中に受け入れられ、通じていくでしょう。

たとえ当初はさほど売れなくても、製品の良さプラスしっかり配慮された商品であることを感じ取ってもらえたら、次の購買行動に繋がり、単なるお客さんから高いLTV(ライフ・タイム・バリュー=顧客生涯価値)を与えてくれる ”熱烈なファン” を生み出してもいきます。

昨今、小売業はリアル、バーチャルという言われ方をしますし、コロナ禍での巣ごもり需要で大変盛り上がったネット通販は、バーチャルショッピングと言えます。

ですがネット通販は、完全なバーチャル市場なのでしょうか?

※ NIKEが最近、ネット上で ”見て眺めるだけ” のバーチャルスニーカーを発売して話題にはなっていますが。

ネット通販の注文時、確かに店員さんとリアルでは会いませんし、商品を直接手に取って見たり感じたりすることはできません。当たり前ですね。しかし、今なお大半の通販商品は届いた時のみに唯一のリアルな顧客接点があります。この接点をビジネス上の大きな機会、勝機にしなければ、繰り返しますが、とてももったいないことなのです。

誰もが自分でネット注文した時、何を買ったか分かっているのに、それでも箱を開ける時、少しワクワクしませんか?以前から欲しいものをようやく手に入れた時はなおさらですよね。

誰かから何も知らされずに贈られてきて、その商品の箱を開封する時はもっとワクワクしませんか?

ネット通販においてこの最後の ”詰め” を怠りますと、じわじわと気づかぬうちに多大な損失=大事な顧客の喪失に繋がってしまいます。すごいチャンスだ!と捉えていたら「配慮」に行き着くはずです。

お客様の気持ちや、届いた時のシーンをどこまで想像して為しておくべきことをするか。

あなたの会社では、どんな「配慮」が為されていますか?

ギフトにふさわしい「配慮」が為されていますか?