• お気軽にお問い合わせくださいTEL : 03-6869-7085
  • 〒104-0061
    東京都中央区銀座 6-14-8
    銀座石井ビル4F

専門コラム 第53話 「ヒット法則は存在しないが、今ある商品から売上を最大化する戦術は存在する」

ギフト通販の話しなのに、宇宙?地球?の写真???

不思議に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

数年前くらいのテレビなどの報道からご存知の方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、世の中には「月の土地」の権利を販売している会社が存在しています。

アメリカのルナエンバシーという会社。”地球圏外不動産業”という、何ともスゴそうな事業を行っており日本法人もあって、BtoBではなく、一般消費者向けにネット通販をしているのです。

ルナエンバシージャパン

http://www.lunarembassy.jp

このサイトをご覧いただくと分かりますが、ギフト利用をすごく促進していますので、圧倒的に自家需要よりも、ギフト利用が多いことが分かります。

・クリスマスに「月の土地」を贈る(メッセージカード・ラッピング付)

・誕生日にサプライズギフトを(ハジーラッピングでお届け)

・ウェディングギフトに「月の土地」を贈ろう

・バースデイギフトに「月の土地」を贈ろう

他には母の日、父の日、バレンタイン、ホワイトデー、アポロの日、中秋の名月キャンペーンなんかもあります。バレンタインでは、月のカードにスペースチョコレートというお菓子がセットされていたり、ホワイトデーでは宇宙食のケーキをセットしたギフト商品があったり、実にユニークです。ギフトカードも通常商品にプラスの金額設定で、しっかりサービスを付加しながら利益確保とともに用意されています。

とんでもなく値段が高そうなイメージがあるこの「月の土地」の権利ですが、商品としては単なる証明書のセットなので、日本で販売されている権利書は一番下の価格で2,700円、一番上の価格でも7,123円。この価格なら様々なギフトシーンで購入促進がやりやすいです。

実際の土地の利用は世界的な月に関する協定によって、個人が権利を所有してもできないそうですので、この程度の価格帯が妥当なのでしょう。

他のアイテムでは、宇宙に関連する地球儀や天体望遠鏡、スワロフスキーで作られたレインボーメーカーなどもありますね。

このルナエンバシーという会社、宇宙協約では月など他の惑星の土地を国家が所有することは禁止されていましたが個人での所有については協約に書かれていなかったため、サンフランシスコで所有権を申し立てたところ、申し立てを受理されたそうで、BtoC販売の事業がスタート。

どこまでの事業規模がなのかまでは不明ですが、本国アメリカでは、月だけでなく火星や金星などの土地の販売も始められたとWikipediaにはありましたので、順調なのでしょう。

経営的に何より秀逸なのは、まず仕入れコストが「ゼロ」であることです。この点は誰の所有でもないところに気づいた素晴らしさと、国に販売を認めさせるために取った行動の勝利です。

次に商品開発と価格戦略。ギフトとして秀逸なのは日本で言うところの”松竹梅戦略”をやっており、単なる権利書だけは安くして、フレームが豪華になって行ったり、付属品が増えるにつれて価格が2.6倍になっている点です。おそらくですが、一番安い権利書だけの需要が一番低く、一番上か上から二番目あたりが、売れ筋の価格ラインでしょう。

そもそも、土地の権利を買うという行為そのものは価格が高いイメージです。まして地球圏外です。そんな権利書ですから、立派なフレームに入っていた方が欲しくなるのは必然です。

この点において駄目押しする意味で、関連する3万円~5万円の天体望遠鏡を販売しているところにも購買心理的なテクニックを感じます。一番高い「月の土地」セットでも7,123円ですから。

他にも購買心理をくすぐる戦略を随所に感じる展開で、基本の「月の土地」を中心にマーチャンダイジング(品揃え)・価格面で、ヨコ・タテ・ナナメへの効率的な展開、また様々なギフトシーンへのアプローチを仕組みとして積み上げられており作られています。こういったマーチャンダイジングの縦横無尽な展開方法は、当社のコンサルティングでも強くお伝えしています。

特に製造メーカーや生産側では、どうしても商品そのものだけに目が行きがちです。販売事業者(バイヤーも含め)でも、商品にばかり目が行くケースが非常に多いです。ですが、今回紹介した「月の土地」の販売サイトのように、独自の商品の良さを磨き、効率的に広げていく視野を持って、消費者心理をすくい取るような仮説を立てたり、テスト販売をしてみてください。

ヒット商品をバンバンと生み出すことは今の世の中では現実的ではありませんし、完全なるヒットの法則も存在しません。ヒットへの努力はもちろん必要ですが、その前に今ある主力商品を軸にして、売上利益を最大化させていくことも十分にできるはずです。