専門コラム 第148話 経営にとって変わらないことも大事。だが「変えること」はもっと大事。
「園さん、昨年お伝えしていた新店舗がいよいよ今月末にオープンします。不安ももちろん大きいのですが、反面、楽しみも大きいですね!」
先週のある日、コロナ影響で苦しんでいる当社のクライアント企業から、こんなイキイキとした内容のお電話をいただきました。
どの部分で苦しんでいるのかと言いますと、地方都市部に本社を構える中小規模のクライアント企業なのですが、観光客向けにお土産を主に販売する実店舗を、複数展開されています。
しかし、コロナ影響から観光客は遠のき、実店舗の事業では、昨対マイナス80%という状況。幸い、BtoBでの卸販売や自社ECは、巣ごもり需要もあって非常に好調なのですが、実店舗のマイナス80%を補完できるレベルではない・・・。
この苦境の中「地元客向けの実店舗をオープンさせる新たな挑戦」へと打って出たのです。
店舗のレイアウト図面も見せてもらいましたが、思わず入ってみたくなる。そんな素晴らしいレイアウトでした。
もちろん、勝算なくして出店するわけでは決してありません。地元の人だけで1日3万人が行き交いする主要駅のストリートの中にオープンさせるので、対象はこれまでのような観光客ではなく、地元客。
これまでお土産で販売している商品も、元々は地元で古くから愛され続けてきたもので、それが全国的にも有名となった地域名産品となり、いつの間にか対象のほとんどが観光客向けとなり、包装資材も立派になっていき、誰もが知るようなお土産品に。
いわゆるギフト化していくことで、価格も高くなり、地元の人が地域自慢の贈り物で使うことはあっても、自家用に消費することが少なくなってきていました。
そして新型コロナの襲来。
そこで原点に立ち返り、昔は地元客自身が食べてくれていたように、実食してもらえる機会の提供も行うため、イートインコーナーも設けた〈物販×飲食〉型の店舗をオープンさせる決断と、この度の実現へと至ったのです。
さらにこのクライアント企業では、EC・DMなどでの自社ギフト商品の通販事業があり、ここは私のコンサルティング領域なわけですが、巣ごもり需要もあって、ECモールでは昨対170%を記録。自社ECでも150%を超えており、新規EC顧客がどんどんと増えている状況。
そしていよいよ、この地元客向けの新店舗オープンに合わせて、店舗に訪れるお客様にはEC会員にもなってもらう施策を始めよう、というわけです。
いわゆるO2O(オンライン・トゥ・オフライン)です。これをD2Cモデルにまで持っていく=地元客との交流を今まで以上に深め、より強いファンになっていただく施策です。
どのように成功させていくか!?はこれからです。
長期化しているコロナ禍から苦しむ業種業態、企業、店舗は直接、間接で様々にあります。
ですが、何か変わること、変えること、プラスすることで、この難局を乗り切るというだけでなく、新たな事業の柱すら作ることが出来る可能性は大いにあります。
これまでも世の中に大きな変化が起こった時、その変化を踏み台にして成功する企業か、変化によって淘汰される企業か、ほぼ二極に分かれます。
すなわち、よく言われる大きなピンチの局面でもあり、反面、大きなチャンスの局面でもあるということです。
ピンチと思って立ち止まるのか、チャンスと思って動き出すのか、です。
先のクラインアント企業は、チャンスと捉え、原点回帰へと踏み出しました。時代を戻るという意味の原点回帰ではなく、未来に向けた原点回帰です。
これまで変わらないこと=地元で愛されてきた商品を、対象客を元に戻すことへ変えることへの変換する挑戦へと、大きな一歩を踏み出しました。
単に変換というだけではありません。自社初めてのイートインコーナーを設け、実食してもらえる店舗。月に2-3回はちょっと贅沢な酒の肴、ご飯のおかずにできるお総菜を提供。自社製品だけでなく地元の優れた商品も出し、地域全体で盛り上げていく心意気もあります。
現代ならではのECを駆使して、実店舗とも繋げていくO2O、D2Cへと繋げていく取り組みがあり、原点回帰とともに未来へと向かうことも、十二分に含まれています。
先にも申し上げましたが、これからなので結果はまだまだ先です。もし思うようにいかずに、たとえ失敗したとしても、その原因さえ明確に分かれば、次のステップへ進められます。
「コロナだから当面は耐えるしかない」と、じっとしているだけでは、何も失わないかもしれませんが、何も得ることは出来ません。
もっと怖いのは、時代の変化によって置いてけぼり、淘汰されてしまうことです。
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