専門コラム 第16話 「ブランド価値を上げるネット通販はどれ?」
先週、日本人なら誰もが知るような老舗菓子メーカー創業家直系の役員の方に初めてお話しをお伺いする機会がありました。
この会社はEC、ネット通販は今までも全く行っておらず、現在は問屋・商社を通じた製造卸販売で全国の小売店での展開がメインなのと、それに加えて自社店舗や百貨店催事なども展開されているのですが、 今後も販売チャネル戦略の中には当面、通販という選択肢はなさそうでした。
役員の方は元々開発畑の方で、これまでも様々な大ヒット商品を生み出されてこられ、今現在も自らが先頭に立って、新商品開発や既存商品のブラッシュアップなどに力を注がれており、そこから強固な事業基盤を築かれ、その点において私どもの基本的な事業に対する考え「商品こそが全ての源」ともまさに合致しており、 意気投合しながらお話しを続けました。
一方で、昨今のECの隆盛への興味は多少はおありで、お話しのなかでこのような質問を受けました。
「園さん、Amazon、楽天、Yahooなどの有名な大手ECのショッピングモールが有りますが、もし当社がECに取り組むなら有効な戦略としては、どのようなことが考えられますか?」
私は「もしECおよび通販に本気で取り組まれるなら、大手ECモールへの出店によるEC事業での拡大よりもブランド価値を真っ先に掲げる企業としては、自社サイトでブランドへの想いやストーリーをしっかり紹介する自社ECサイトをまずは運営するべきだと思います。その自社ECサイトから企業としてのブランドメッセージをさらに発信することで、結果として既存の総合的な販売チャネルにもブランド価値のさらなる認知から、総体的な売上として、間違いなく好影響を生み出すはずです。」
即時にこうお答えし、ご納得をいただけたご様子でした。
また、この時にはお伝えできなかったのですが、LOHACOのようにブランドサイトをモールの中にそのまま出せるのは、このような企業にとっては有効かもしれません。
経産省などの調べで、楽天・Yahoo・Amazonの大手EC3社の販売額が約6.7兆円に達し、全国百貨店売上総額を2017年、初めて上回ったことが発表されました。
今後どこまで、スーパー約13兆、コンビニ約12兆にも追いつき、追い越す日が来るのか。どこかで頭打ちとなるのか分かりませんが、西友が楽天と提携、セブン&アイはYahoo傘下のLOHACOと提携、イオンはYahoo、ソフトバンクと提携するなど、リアル店舗とネット通販の融合運営を、流通業界では大きく模索をし始めています。
アメリカやお隣りの中国ではネット通販だけの影響ではないのかもしれませんがどんどん老舗百貨店が閉店倒産、Amazonによる有名チェーンのホールフーズの買収など様々に追い込まれており、ここ日本でも特に老舗の地方百貨店の閉店や縮小なども相次いでいます。
百貨店というのはその名の通り、その昔は”なんでも揃うお店”がコンセプトで、商品が不足していた時代は重宝されましたが、地方にも続々と大型ショッピングモールが出来て、今ではネット通販=ECで商品やサービスの購入がほとんど出来てしまう時代であることから、その衰退も仕方ないと感じます。
なんでも揃うお店=百貨店であるなら、今の時代、なんでも揃うという視点からだけで言いますと、Amazonの出品数、楽天の出店数の多さから見ても、EC・ネット通販こそが”現代の百貨店”ではないでしょうか。
そのEC全体の市場規模は15兆円とも言われますが、前述の大手3社で6,7兆円ですから約4割を占めています。とても大きな数字ですが逆に見れば、約8兆円の約6割は大手3社以外なので、その方がまだまだ大きい訳です。
もちろん大手はどんどん寡占化を狙うでしょう。しかし、2017年にネット通販を利用した世帯(2人以上)は34%と前年より6.5%上昇、1世帯あたりの毎月の消費額も初めて1万円を超えたそうで(年間だと12万円以上!)、スマホ依存症が警鐘されるほど全盛になったスマートフォンをデバイスとするECも決済や注文の利便性からどんどん急成長しており、ますますEC市場が上昇し続けるのは間違いありません。
私の家庭でも昨年、経産省の世帯別家計消費動向調査に協力していました。私の妻は専業主婦ですが、自家用車にも乗り、百貨店やショッピングモールが立ち並ぶ都市の主要駅まで電車で5分でありながら、楽天も、Amazonも、Yahooも、海外サイトも、他のサイトも使う、ネットスーパーも使うなど月額平均3万円(年間36万以上)は利用していると報告していました。
リアルのスーパーも使いますし、百貨店もコンビニも利用しますが、我が家での日常生活消費順に言いますと、1.スーパー、2.ネット通販、3.旅行、大きく離れて4.コンビニ、5.百貨店、6.地元商店街みたいな感じです。ちなみに我が家の1.スーパー 利用は月約6万円なので、EC利用3万円の2倍ですが、ネットスーパーの利便性がもっと高まれば逆転してもおかしくないでしょう。
さて、ビジネスの方に軸を戻しますが、私どもがオススメしているギフトの通販。ギフト市場は10兆円超と言われていますが、通販市場の中だけでのギフト売上についてはまだ明確な数字が出ていません。(当社目測値はありますが)
だからこそ多くの通販に携わる企業に、今この内に大きなビジネスチャンスとして捉えていただきたいと思っています。ギフトは毎年誰もが利用し、それなりに知っているにも関わらず、自家消費向けの市場があまりにも大きすぎるため、その延長線上でしか捉えられていないことも多いのが実情です。
ECがますます発展すればするほど、その中でのギフト利用というのも当然ながら同時に伸びていきます。 ギフトは基本、人に贈るものであり、自分用に買うものとは売られる商品が全く同じものであっても、その購買動機や購入時のフォローなど、入口も出口も、実は180度違うと言っても過言ではありません。私は通販業界、ギフト業界の双方に身を置いたこれまでの経験から、そう断言します。
多くの企業では自家需要向けの方が取り組みやすく、大手ECモール出店などで通販での売上を求めれば求めるほどに、ギフトの方はおろそかになりがちですが、ギフトがしっかり対応できる企業やお店というのは、 ますます信頼度が高くなり、ブランド力の向上にも大きく役立ちます。
さらに、付加価値も付けやすく価格競争にも巻き込まれにくいため、利益構造も良くしてくれるのです。
あなたの会社のブランド向上のために自社ECサイトを磨いていますか?
自分用の通販もギフトの通販も同じように薦めていませんか?