専門コラム 第153話 「お客さん投資の複利効果」を実現、安定した経営基盤を作る最大要素とは?
日頃お付き合いのあるクリエーターNさんに、当社クライアント企業に関わるある案件で見積りを依頼したときのことです。
「Nさん、前回似た案件の時に〇〇万円でしたので、今回も同じ金額でいけますか?」
「園さん、ちょっと待ってください。今回は30%アップでお願いしたいです。ダメですか?」
3割増とはマジか〜!?・・・と、一瞬思いましたが・・・。
「承知しました!では30%アップの〇〇円で見積もり提示をお願いします。」と即答。
なぜ、30%もの大幅な値上げを受け入れたのか?その理由は明快です。
Nさんのこれまでの仕事ぶりを高く評価していて、他のクリエーターに鞍替えするより、このように値上げされてでもお願いしたい!と、常日頃から思っていたからです。
一方でお断りするケースもあります。価格が安い高いだけでは判断していない中、なぜ断るのか?
価格に見合った、いや価格以上の”価値”をどうしても見出せないケースです。
具体的にはどんなケースか?
最も大きなことは、他の会社でも同様のサービスがあるケースです。
いくら「ウチはココが他社とは違います!」と言っても、お客さんはさほどその差を感じなかったり、取ってつけたような差別要素レベルでは結局、価格が安いか高いかだけで判断をされてしまいます。
結果どうなるか。
何とか値下げに応じたりして受注できても、「どこも似た感じだし、ココが安いから使おう。」というお客さんばかりになります。他にもっと安いところが出てくれば鞍替えもされてしましいます。
ですが、そこから回避する方法があります。お客さんが次に依頼してくる時までに、商品、仕事、サービスなど、様々にブラッシュアップしておくことです。
こう言うと「ブラッシュアップって当たり前すぎることを言うなぁ。」とのお声が聞こえてきそうですが、昨日の自分を超える!と、よくアスリートの言葉などに出てきますが、やってすぐにはその効果が目には見えないブラッシュアップをし続けることを、目先のことだけを見たり考えてしまい、意外に日々のブラッシュアップができていない会社や経営者の方も実は多いのです。
たとえ安い金額で受注したとしても、想定以上のサービスを最初は少々赤字でもいいから提供したり、そこから次の案件が来たときには値段が高くてもこの会社、この人にお願いしよう、ココでしかこのクオリティは出せないな・・・と思わせることができるかどうかです。
いつもと同じ仕事の質の繰り返しでは、こうはなりません。
一つ一つの仕事を大事に、お客さんの状況に合わせて懸命に共に深く考え、実行するか。凄いなあ!やるなあ!ありがたいなあ!とお客さんが喜ぶような仕事の質を提供したり、お客様のための提案ができるかです。
マーケティング的に言いますと、損して得とれ。
この先行投資を逆算意識してできるか。意識を持っていなければ、ただただ大変だ、これでは赤字だ・・・と思うだけでモチベーションは上がらず、やってもやっても安さを求めるお客さんばかりを掴んでしまい、客数はさほど変わらないのに、気がつけば売上も利益も減っている・・・という、最悪な状態に陥ります。
単品通販で言いますと「えっ!?初回、無料で2箱ももらえるの!?」のTVCMで有名な、しじみ習慣のようにフロントエンドの間口を大きく開き、バックエンド(お試し客→顧客→VIP客、ファン作りへのCRM構築)へと繋げたりということを“永続的な事業の仕組み”として設計する。
この一連のことは、どんな商品・サービスを、どんな高いクオリティ=質で常に提供できているか。クオリティを常にブラッシュアップし、高める努力を日々しているか・・・と、ある意味同じなのです。
結果、値上げの際も堂々と自信を持って伝えることで、これまで安いだけで利用していたお客さん(そもそもお客さんと言えるか?)は去り、価値で買ってくれる”真のお客さん”だけが残り、強く安定した事業基盤へと導いてくれます。
もう一度申し上げますが、ただ同じ仕事の繰り返しではこうはなりません。
経営も事業も商品もサービスも。日頃怠らないブラッシュアップが会社を大きく飛躍させる最大の要素です。
BtoBでも、BtoCでも、そこに商売相手がいれば同じことです。多くのお客さんの正体、実は値段が安いからあなたの会社から買いたいのではなく、価値があるから買いたい。今すぐには実現できなくても色々なお客さんに対し、堂々とNOかYESを言える事業経営。
株式投資の複利効果ではないですが、この日々のブラッシュアップが気がつけば5年・10年経って、”お客さん投資の複利効果”から、長く続く安定した経営基盤を実現させるのです。