専門コラム 第188話 目的と目標が見えなくなってくると、儲かる事業には決してならない。
「園社長、現状打破するために近日ご相談に伺たいと思っていました。ウチの社長からスケジュールの遅れを詰められまして・・・。どのように進めていけばいいのでしょうか?」
今年のGW明けが明けたある日、停滞してしまっている新規事業の進捗を何とか現状打破したい!とクライアントの社員、Uさんが当社オフィスに来られました。
ご来社早々に私は開口一番、Uさんにこのように聞きました。
「社長への報告が、細かいことばかりになっていませんか?」
まず私は、社長への報告における ”視点の相違” が混乱とスケジュールの遅れに直結していることを指摘しました。
このクライアント企業のコンサルティングは少し特殊で、社長は大阪の本社におり、社長は東京支社勤務のUさんの大いなる成長を期待し、ギフトでの新規事業立ち上げを任されています。その期待に応えようと、真面目で前向きに真剣に取り組むUさんは、進捗報告をとても丁寧にメールや電話で社長にされているのですが、厳しい言葉で返されてしまっていました。
「Uさん、一周回って・・・にはなりますが、今一度、事業計画書を作成してください。社長はUさんに任せると仰っていますが、今取り組もうとしている新規事業が3年後5年後にどんな売上・利益のシミュレーションが為されているのか、黒字化するのはどの辺りのタイミングなのか?が、最も知りたいことなんですよ。」
Uさんは「分かりました。確かに枝葉部分の報告ばかりになっていました。売上利益計画を今一度策定して、その上で進捗報告するようにします。」
この話に限らず、ビジネスを進めていくと、当然枝葉的な細かい部分も多々出てきます。
新規事業では、新商品や新サービスを開発していく過程では、製造開発コスト、運用コスト、外注するのか内省で行うのか。ターゲットとする客層やその市場、販売チャネルは?販売価格をいくらにするのか?人員体制はどうするるか?マーケティング施策は?SNS活用をどうするか?などなど。
考えなければならない、取り組まなければならないことはいくらでも出てきますし、まして新規事業の場合、特に中小企業では現在行なっている業務に加えて、これらを行わなければならないため、時間も労力も当然掛かります。
では、中小企業の新規事業開発はそんなに難しいのか?
もちろん簡単ではありませんが、決してそうではありません。
目的・目標を明確にして、そこから必要な落とし込むべき細かなことを記し、優先順位をしっかりつけて着実に実行していく。
「そんなの当たり前だろ!」と怒られるかもしれませんが、その当たり前が、目の前のことをやっていくうちに、いつの間にか出来なくなっていたりすることは先のUさんのような社員だけでなく、社長自身でもたくさんご経験あると思います。
いついかなる時も、停滞した時、立ち行かなくなった時、戻るべき場所は目的と目標です。
植樹に例えますと・・・
種蒔きをする時点では「何のためにこの場所に種を蒔くのか?そこにどんな花を咲かせて、どんな実をどれだけの量を収穫するか?」を、明確にされているはずです。
このための途中経過が、芽の出方、枝の伸び、葉のつき方、いいタイミングで生育させるための水や肥料のやり方・・・ですが、多くの社長=経営者は、得られる結果を先に求めます。
一方で、結果を得るためには相応のコストも時間も労力も掛かることも当然知っています。その次に、その結果を出すために必要なコスト、時間、労力があるのです。
業務をしていると忙しさとともに、次のことが先に来てしまって最初に定めた、得たい結果=目的・目標が、いつのまにかどこかに置き去りになっていたりすることをよく目にします。
細かい業務の決定や進行においても、判断基準があいまいでわからなくなり、堂々巡りを起こしてしまい、スケジュールの遅れに繋がったり、方向性にブレが生じたりするのです。何とか立ち上げられたとしてもその後も右往左往し、うまくいくはずはありません。
あなたの会社の事業や開発はどうですか?
細かなことばかりに注意がいっていませんか?