専門コラム 第75話 ターゲット層に社員の層は合っているか?
先日、日経MJに出た以下のタイトルと記事にとても共感したのでご紹介します。
「マーケティング シニア自身で」
「博報堂、クリエーター組織結成」
「50~70代 先入観なく商品販促」
リード記事は「博報堂はシニアビジネスの開発を支援する組織 ”博報堂シニアビジネスフォース” を設立した。シニア層のクリエーターやコピーライターを集めたチームを相次ぎ結成した。「アクティブシニア」などステレオタイプのシニア像ではなく、多様なシニアの実態を把握。同年代の目線を入れることで、シニア世代の実態に即した事業展開をできるようにする。」
社内のシニア人材の兼任や、外部のシニア人材、60~70代の博報堂OBの男性クリエーターなど約30人でテーマに応じて戦略を検討する組織を結成したとのことで、一環として50-60代の女性8人のコピーライターで構成した「紅組」では「大人のオンナの実感値で答えを出す」という考えから、50歳以上の女性をターゲットとした広告企画を中心に手掛けるとのこと。
この目的・理念は代表の言葉でこう書かれていました。
「シニアのビジネスでは消費者の悩みを含めた実態を把握するのが重要」
「同年代の目線から消費者が求めているものに答えられる」
「シニアにとっての『新しい幸せ』を作っていきたい」
国立社会保障・人口問題研究所によると、2025年に65歳以上の人口が30%=ざっと3,500万人に達し、65~74歳と75歳以上に分解すると、12.7%、17,8%で、シニア層もその内実は多様化しているようです。
例えば、10~20代の若者から見れば、シニアは一括りに見えるでしょう。ですが、シニアと見られる年齢になった方なら、それぞれ人によって違うということは当然分かりきっていることです。
しかし、どうもビジネスやマーケティングとなった瞬間にどこかアクティブシニアのライフスタイルはこう、ある一定年齢以上はこう、年配の女性はみんなこんなライフスタイルなどと、決めつけてしまっていませんか?
私が20代独身で通販会社に勤務していた頃、当時の顧客層は40~60代でした。
様々な企画立案するなかで、どうしても自分の生活からは想像のつかない層へのアプローチであったため、その年齢やライフスタイルに近い上司や先輩、自分の親などにもいろいろと聞いたりして取り組んでいました。
幸いにも自分のチームはうまくいって成功を収めましたが、苦しんでいたのはアパレル商品や生活雑貨の企画開発チームでした。
そこには当時の私と同様に20代独身の若者が複数マーチャンダイザーとして在籍していましたが、40-60代の女性向けアパレル商品や生活雑貨を20代独身の若者、しかも多くは男性社員で行うこと自体、極めて困難な状況が存在していて、やはりうまくはいかず、会社の足を引っ張る結果になっていました。
もちろん博報堂のような大手企業だから、適宜にそういった最適な人材を確保できているということはあります。ですが、中小企業でも社内人材だけに頼らず、外部活用で自社ターゲット層に合うクリエーターやマーケッター、コンサルタントなどを活用する術はあるでしょう。
若い独身の人、定年を迎える直前の年配の人、小さな子どもを抱えるファミリー層、富裕層・・・。単純に年齢・性別だけでライフスタイルがおおよそ決まっている時代ではなく、多種多様な価値観・悩み・欲求が存在することは、自分と同じ世代・性別を考えればよく分かります。若い人が年配者を、年配者が若い人を見ても、一部の流行り的なものは見えても、すべては見えてきません。
この博報堂の取り組みには大いに注目していきたいですし、ターゲット層の生活にどこまで寄り添える取り組みを行うかが、中小企業ビジネスでもその活路を効率よく見出し、成功への近道となるでしょう。