専門コラム 第48話 「ネット販売だけではない、あらゆる通販が秘める大きな未来」
今、通販と聞くと=ネット販売だけを思い浮かべるほどにECは成長分野ですが、従来のテレビショッピングも好調ですし、ダイレクトメールや紙の通販もネット販売と絡めるような形で、その良さの見直しも進んでいます。
その伸長を続ける通販市場に魅力と将来性を感じ注力していこうという動きが、これまでの問屋や商社、代理店といったリアル商流だけで流通してきた製造メーカーにあります。
それが、以前もこのコラムでも取り上げた、通販の新潮流D to Cです。D to Cとは、Direct to Consumerの略で、「メーカー直販」のことです。特に通販の先進国であるアメリカでは大手の消費財メーカー(化粧品やシャンプーなど)などがリアル店舗や代理店を通じた販売でなく、ネットを介在したECでの販売の動きを活発化させていますが、ここ日本の大手製造メーカーでは、その動きはさほど表面化はしていません。ですが、これからは変わっていくでしょう。
新たな日本国内でのDtoCの動きの中では、先日メルセデスベンツが公式オンラインショップ限定での販売も開始しました。そんな中、大手TVショッピングのジュピターショップチャンネルが、高級車BMWを来月11月24日に販売するとの先行発表が先日ありました。BMWが日本のテレビ通販番組に登場するのは今回が初めてだそうです。
以前もショップチャンネルでは、ランボルギーニを販売したことがあるそうですが、今回はより普及しているBMWなので、近くにディーラーの無い地方の見込客はもちろん、店舗であれこれ迷うのが面倒な層などの潜在ニーズを掴む可能性は、多いにあるのではないかと見ています。
この形態は、D to B to C(Direct to Business to Consumer)とも言い表せます。今回の方法は大手通販会社と取り組んだ販売です。以下に発表されている販売の概要を記しておきます。
車種:BMW i3Atelier レンジ・エクステンダー装備車(以下、BMW i3)EV車(電気自動車)
販売数:10台限定
価格:(未発表)店舗でオプション込み638万9千円の車を、さらに魅力的な価格とショップチャンネルだけのオプション付きで提供
出演者:営業成績の高いBMW担当者が、BMW i3や電気自動車について解説
販売方法 :ショップチャンネルは車購入の頭金充当の「車両購入クーポン」を販売(購入クーポンには、ショップチャンネルならではのさまざまな特典を付与)
『BMW i3』購入までの流れは次の通り。
(1)ショップチャンネルに申し込み:「車両購入クーポン」を購入
(2)証書を受領:ショップチャンネルから証書を郵送
(3)BMWから連絡:BMW担当者が電話で連絡
(4)BMWの説明:BMW担当者が購入者の自宅を訪問、試乗の実施
(5)購入契約:購入契約手続きを実施
(6)アフターフォロー:BMWによるアフターフォロー
詳しくは分かりませんが、この流れから見ますとショップチャンネルが車を仕入れて売るといった単純な形ではなく、車両購入クーポンを販売するところまでが通販会社が担う役割のようです。クーポン購入後はBMWに引き継ぐ・・・新しい通販の販売形態とも言えます。
今、テレビショッピングの世界では高額な商品を販売することも増えてきています。ジャパネットたかたでは今年から、クルーズ旅行の販売が開始されました。テレビでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本一周クルーズ旅行 9泊10日 2名代金 599,600円という旅行商品です。自社でほぼ全てをまかなうジャパネット社らしく自社内に旅行サービス部を設置、船内にはジャパネットのスタッフデスクも用意するという、完全オリジナルな内容です。
ギフトで考えた時、600万円の高級車を通販で贈る・・・といった可能性は少ないでしょうが、クルーズ旅行であればギフト利用の可能性は多いにあります。特に年配になった親へのプレゼントとは最高ではないでしょうか。
旅行分野は、内容・価格の比較検討のしやすさからECの利用がものすごく多くなった、書籍・CDなどと並ぶ代表的なジャンルですが、それでもTVショッピングで具体的に紹介されるとすごく分かりやすく価値も伝わりやすいと、ジャパネットの番組を見て感じました。ネットで迷うのが面倒な人もいますし。
このようなショップチャンネルでのBMW販売も、ジャパネットの旅行商品販売も、テレビショッピング・通販での高額商品販売の可能性を感じるものとなっていくことに、大いに期待を寄せています。さらにこういった高額商材がギフト利用にまで達していくことも。
あなたの会社のネット販売事業でも、他の通販の世界にもぜひ注目してみてください。
TVショッピング、ラジオショッピング、ダイレクトメール・折込チラシ、誌上広告・・・
リアルもバーチャルも、デジタルもアナログも、商品ジャンルも関係なく、全ての通販に通じる、今も力強く進む業界先人の知恵が、そこにはたくさん詰まっています。