専門コラム 第20話 「SNS時代から見えるギフトの可能性」
先日の日経MJにこんなタイトルの記事が出ました。「SNSのあしながおじさん」
SNSで交流をしているだけの会ったことのない人にお金や物品を贈る人が増えているとのこと。これまでの常識では考えられないようなことがギフトの世界でも起こり始めています。インターネットを通じてカンパを募る「Polca(ポルカ)」というフレンドファンディングと銘打たれたアプリでの1口当たりの募金額は300円〜500円程度と極めて少額。お礼・見返りは活動報告などに留まり無いに等しいのですが、ここに紹介された会社員の方は、「結婚式を挙げられなかった両親の結婚式を開きたい」という高校生の投稿などに感銘を受け、このアプリからこれまで150回以上、総額20万円を寄付したそうです。
海外の見知らぬ人にポイントや品物を気軽に贈れる「Airtoripp」というアプリでは、日本のユーザーがインドネシア、台湾、キプロスのユーザーとこのアプリ上で親しくなり、子供服やハーブ、クッキーをもらい、お返しに菓子や味噌汁、梅酒など1万円相当を贈ることもあるといいます。
他にもふるさと納税ならぬ、”ふるさとボックス”なるものも登場。ツイッターのフォロワーと金額を設定して、互いの地元の特産品などを贈り合うそうです。「選ぶのも楽しい」「一度も行ったことのない土地なので、スーパーに売っているものだけでも新鮮でとても楽しい」とありました。この”ふるさとボックス”は、企業や地方自治体が仕掛けたものではなく、秋田県在住の女性が趣味を通じて知り合った沖縄県のフォロワーと互いにお酒が好きということから、秋田の日本酒と沖縄の泡盛を贈りあったことに始まり、同様に贈りあった愛知県のフォロワーが”ふるさとボックス”と名付けたことから一気に広まったそうです。
マーケティングの世界でも インターネットの世界でも”シェア” という言葉が席巻しだしてから久しいですが、贈りもの=ギフトの世界も、このようにシェアに紐づく時代に突入しています。従来の儀礼的なギフト=フォーマルギフトから、カジュアルギフト、ソーシャルギフトなど気軽に贈ることへシフトし、幅を広げてきていることが前述SNSの事例からも伺えます。見返りを求めない贈りものもあれば、互いに贈り合うことを楽しむギフトもあり、そのギフトの贈り手には選ぶ楽しさもあります。さらにその先には常にこのコラムでも何度も申し上げている通り、ギフトは相手の喜ぶ顔、姿、声、SNSなら喜びのコメントが見たいという、贈る側の強い気持ちが込められています。その贈った相手が喜んでくれる気持ちこそが一番の見返りなのです。そして、贈られた側は一生懸命に贈りものを選んでくれたという贈り手の気持ちが、いただいたモノよりも嬉しいことなのです。ですので、ギフトのビジネスはモノのみで考えるのではなく、常にシーンを含めたコトを想定した商品やサービスの提供・開発が何より重要です。
一部の例外はありますが、どんな商品でもサービスでもギフトが成立するという可能性は大いに秘めています。綺麗なラッピングや化粧箱などが全く必要ないギフトもあります。
あなたの会社の商品やサービスはギフトにはならないと諦めていませんか?
今一度、見直してギフトマーケットへの進出も考えませんか?